ご挨拶

会長

グローバルヘルス
合同大会長

小林 潤

学会場は那覇空港から近い糸満市のビーチサイドに新しく建設された美しい会場です。日本熱帯医学会、日本国際保健医療学会の両学会員が楽しめる大会として企画していきますので、是非沖縄に足を運んでください。

 熱帯医学会は1974年に桝屋先生が那覇市で開催されてから沖縄開催は今回が6回目の開催となります。国際保健医療学会は2013年に小川先生が名護市で開催してから2回目です。両学会においてやはり沖縄は特別な場所かもしれません。亜熱帯地域に位置し熱帯病が過去に蔓延し、またユニークな公衆衛生の歴史を持つ沖縄は、いかに興味があるものであるからでしょうか。今回の学会では過去の学会のように沖縄の歴史をみることを尊重しながらも、議論はアジア・太平洋地域の一員である日本のグローバルヘルスは何をすべきなのかを問いたいと考えています。

 The Lancet 編集長の Hortonは、2023年5月のCommentで、グローバルヘルスは激しく時代遅れである、低中所得国に住む人々の健康に関心があると主張しながらもその実態はカネと権力に支配されていると強烈な批判を展開しました。その利己的な研究スタイルは対象国の保健医療の持続的な発展に実際にはほとんど寄与せず、英語圏高所得国の植民地主義に源流を持つ排他的なクラブであるとも指摘しています。思えば、私自身もイギリスやアメリカが展開するグローバルヘルスに刺激を受け、必死に追いつこうとしてきていました。2013年に沖縄に戻ってからは、その違和感に気づかされました。沖縄の隣人である、アジアの各国は急速な経済成長をとげ、グローバルヘルスもアジアの中で日本だけが優位的に語っているものではもはやありません。これらの地域に渡航するのに沖縄から数時間しかかからず、東京よりも近く、身をもってこのことを感じさせられます。一方、その陰で健康格差の問題は、沖縄で、またアジア各国、太平洋島嶼国で見えにくくなっていますが、実は依然として続いてきてしまっている課題です。

 今後の日本のグローバルヘルスをどうしていくかは色々な考えがあると思います。しかし植民地主義に源流を持つ排他的なクラブを追及したいと思うかたはいないのではないでしょうか。アジア・太平洋の隣人とともに歩み且つ、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ大陸にどう発信して貢献するかを語れたらと思い“Proposals from Asia and Pacific Islands” という大会ビジョンを作らせていただきました。

 昨日は沖縄各地で青年団によるエイサーを見れました。また台風が近づくなか嵐の前の静けさか、海はどこまでも青く光っています。一方、街にでれば韓国語や中国語を聞かない日はありません。オスプレーの音で講義を中断するのは日常茶飯事です。長寿の美しき島の十代の健康問題は残念ながら課題が山積みです。媒介蚊の密度は上昇していることを肌で感じられる暑さです。

 是非沖縄で皆さんと共に語りたいと切に思います。めんそーれ

2023年9月15日