会長挨拶

第28回日本心臓リハビリテーション学会学術集会
会長 大屋 祐輔
(琉球大学大学院医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学 教授)
新型コロナウイルス(covid-19)感染の影響を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
このたび、第28回心臓リハビリテーション学会学術集会を2022年6月11日(土)・12日(日)の2日間、沖縄コンベンションセンターにて開催することになりました。これまでと同様、多職種が楽しく学び、かつ、最新の知見に触れることができる学術集会としたいと思っております。
一昨年より世界中を巻き込んだ新型コロナウイルスの感染拡大は未だに世界中に脅威をさらし、コロナ禍はわが国の医療および社会生活に大きな変化を巻き起こしました。感染拡大のたびに、医療崩壊の危機にさらされ、通常医療も大きく制限を受けました。また、自粛生活を余儀なくされた多くの高齢者においては、心臓リハビリはもとより、活動量の低下からフレイル/ロコモティブシンドロームの進行や社会からの隔絶による生活の困難化が懸念されました。一方、そのような状況を打破するために、オンラインを活用した患者支援や遠隔(リモート)リハビリ等への取り組みも大きく進みました。私たち心臓リハビリテーションチームはすべての心臓リハビリテーションが必要なすべての循環器病患者に対して「だれ一人取り残されること」がないように、リハビリテーションの実施に努めたいと思います。
2021年に『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』改訂版が発表され、運動療法だけでなく疾病管理プログラムとしての包括的心臓リハビリテーションの役割が強調されています。このガイドラインでは栄養や精神心理学的介入だけではなく、腫瘍循環器リハビリテーションや緩和ケア、地域包括システムにも言及されており、心臓リハビリテーションにおける多職種連携、急性期・慢性期病院だけでなく地域にまで及ぶ連携と繋がりが求められています。循環器疾患患者が「だれ一人取り残されない」リハビリテーションの実現のためは、急性期・慢性期の診療から地域生活に至るまでに、患者と家族に関わる全ての職種が参加するハートチームの存在が必要となっています。また、最新のIT機器を使った遠隔診療システムはコロナ禍という環境においても、また、離島やへき地医療など空間の問題で取り残される人たち対しても有用な手段となるでしょう。
また、急性期リハビリテーションの進歩により、循環器疾患患者の予後やQOLは改善し、また、入院期間は短縮されました。一方、退院後の心臓リハビリテーションの普及率はまだまだ低く、この課題の解決のために地域連携、医療と介護連携の更なる推進や、今後は遠隔医療の活用も鍵となるでしょう。
今回の学術集会のテーマは「共創(ゆいまーる)する心臓リハビリテーション」です。沖縄の方言に「ゆいまーる」という「助け合う」「共同作業」「一緒に頑張ろう」といった意味の言葉があります。「ゆいまーる」はみんなで作る(共創)とほぼ同義と考えてよいでしょう。コロナ禍において人と人とのつながり、想いをつなぐ「人の絆」の重要性を再認識した今、コロナ禍を乗り越えた先にある社会を見据えた心臓リハビリテーションを「ゆいまーる」の精神で共創するために、多くの経験や研究結果を発表し共有する学術集会にしたいと考えております。世界は今、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」をめざして、だれ一人取り残されることのない多様性と包摂性のある未来を目指しています。コロナ禍という逃げ場のない困難の中であっても患者や医療者が「すべての場所でだれ一人取り残されない」システムを実現しなくてはなりません。
新型コロナウイルス(covid-19)の感染状況が人々の叡智により2022年には終息にむかっていると期待し、沖縄の美しい太陽(ちゅらさん)輝く青空の下、紺碧の美しい海(ちゅらうみ)を眺めながら、皆様と顔を合わせた熱いディスカッションを全国に発信することを楽しみにしております。ひとりでも多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。2年ぶりに、沖縄で再会しましょう!!
2021年8月吉日