ご挨拶

会長:屋嘉比 康治

第43回日本潰瘍学会
会長 屋嘉比 康治
(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)

近未来潰瘍学の創造とトランスレーショナル研究

 このたび 第43回日本潰瘍学会を担当させていただくことになりました。今回は全体のテーマを「近未来潰瘍学の創造とトランスレーショナル研究」とし、6月19日(金)、20日(土)に沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)及び名護市の万国津梁館にて開催します。

 日本潰瘍学会は主に薬学系研究者と臨床系医師ないし医学系研究者より成り立っていますが、第43回本学会では沖縄科学技術大学院大学のOISTとの合同企画も行われます。OISTは理論物理から生物系科学まで幅広い自然科学の研究者を世界から招聘し、その成果を沖縄のみでなく広くアジアや世界に還元することを期待されて創立された大学院大学です。合同シンポジウムでは本学会会員のみでなくOISTの研究者や企業の研究者の方々も加わっていただき、異なる研究分野や研究施設の間での学際的なディスカッションが行われることによって新たな知見や発想が生まれることを期待しています。本学会とOIST との合同シンポジウムは2 企画予定しておりますが、合同シンポジウム1では潰瘍学において最も重要なテーマの一つであるHelicobacter pylori(Hp)感染による胃癌発生機序の解明を取り上げ、臨床の側面と基礎研究の面から探究する予定です。このテーマをHp 菌株の分布が他県と異なり胃がん発症が少ない沖縄にて開催することに重要な意義があり、疾患発生におけるHp菌株の意義が見えてくるものと期待しています。また、合同シンポジウム2の「創薬」に関しても「創薬・育薬」に進歩を果たせた研究と、さらに沖縄の海洋生物からの創薬の取り組みも発表される予定であり、これも本学会会員の視野を広げることになると期待しております。また、一般演題については通常の2倍の応募があり、多くの医療機関ないし研究施設からの発表を見聞でき幅広い知識が得られるものと確信いたします。さらにスポンサードイベントも「新たに開発された酸分泌抑制薬の薬理学的作用や効果」、「GERDの長期経過」、「最新内視鏡の機能」、「IBDにおける粘膜治癒の意義」、「近未来潰瘍学」などupdateなテーマの講演ないし議論が準備されています。必ずや会員の皆様および参加者の方々の知識の拡大に寄与できるものと確信しております。

 梅雨の空けた6月の沖縄は、南風の心地良い「ウリズン(初夏)」の気候であります。参加者の皆様においては、本会では潰瘍学における新たな知見を探究し、さらに時間が許す限りOISTより眺望できる東シナ海、もう一つの「海洋」も探究し、心身のリセットをはたせる事を念願しております。