大会長挨拶

第43回日本産婦人科医会 性教育指導セミナー全国大会 大会長 佐久本 哲郎

第43回日本産婦人科医会 性教育指導セミナー全国大会 
大会長 佐久本 哲郎 
(沖縄県産婦人科医会 会長)

この度、公益社団法人日本産婦人科医会・第43回性教育指導セミナ-全国大会を沖縄県産婦人科医会の担当で開催することとなりました。当初宜野湾コンベンションセンタ-で開催予定でありましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染がパンデミックな状態にあり依然として収束が見通せない状況です。性教育指導セミナ-全国大会は次世代の日本の健康に寄与する重要な役割を果たす学術集会です。セミナ-からの情報発信は全国の性の健康教育に取り組む指導者の皆さんへの大きなメッセ-ジであり、問題解決へつながるものと確信しております。安全な性教育指導セミナ-全国大会の開催とCOVID-19感染拡大予防を行うため開催形態を従来の現地開催方式を今回はWEB開催・オンデマンド配信にて行うこととしました。

本大会は公益社団法人日本産婦人科医会の重要な集会の一つであり、その内容は単に性教育にとどまらず、少子化問題、性暴力被害者対策、若年妊娠、Genderなど多岐にわたるテ-マが取り上げられてきました。

今回のメインテ-マは「脳科学が解き明かす愛と性と生」としました。これまでの性教育あるいは性の健康教育は文部科学省の指導要綱もあり道徳的指導が中心で行われています。しかしながら子供たちは脳機能に基づいて成長、変化しながら生きていくという特性があります。今回我々が直面する性の健康教育を深く知るために人間の愛と性と生に伴う行動、感情を脳科学の観点から理解するために講演を企画しました。村瀬幸浩先生の基調講演、黒川伊保子先生の特別講演、二題の教育講演を通して現代の若人の生き方を理解し、見守り、育てに生かしていただきたいと思っております。

シンポジウムは「若年妊娠・予期しない妊娠/計画しない妊娠の課題と克服に向けた取り組み」を取り上げました。スマホの急速な普及により情報過多時代が引き起こすこの問題は全国的にも取り上げられておりますが、特に沖縄県は10代の出生率が全国の2倍強あり大きな課題となっております。また子供の貧困率の高さはさらに深刻で、その要因の一つが若年妊娠・出産の連鎖によるものと考えられています(沖縄県:29.9%,全国:16.3%)。このような状況の打開に、自見はなこ先生から行政府の取り組みを解説して頂きます。特別発言においては日本における性教育の課題、問題点を検討し、課題克服のための新たな教育方法を提言してもらいます。また実際に行われている各種活動の報告があります。シンポジウムを通して今後行政の果たすべき施策とともに産婦人科医、助産師、看護師、教育関係者、養護支援者の果たすべき役割を皆様と共に考えていき、明日からの活動に役立てて頂きたいと思っております。

本集会においては特別に沖縄産科婦人科学会・沖縄県産婦人科医会共催セミナ-を企画しました。セミナ-においては①女性特有がんである子宮頸がんを取り上げました。子宮頸がんの発生機序が解明され、その予防にHPVワクチン接種が有効であることが世界的に数多く報告されていますが、我が国においてはワクチン接種がいまだに低率で、子宮頸癌発生も若い世代で増加傾向にあります。榎本隆之教授からこの問題打開に向けたご講演をいただきます。②コロナ禍で新しい生活様式となっておりますが、そのような状況が日本人の性の健康にどのような影響が与えているか、大きな調査結果から解説してもらいます。③性教育は学校教育のみならずあらゆる場面において多くの職種の方の努力でなされています。その中で産婦人科医の果たす役割について述べてもらいます。

恒例の大会前日に行われる市民公開講座が中止としましたが、予定していた講演すべてをプログラムに取り入れました。

今回のセミナ-でご講演頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。また沖縄県、那覇市、沖縄県教育庁、沖縄県警察、沖縄県医師会はじめご後援、ご支援いただきましたすべての団体の皆様に心より感謝申し上げます。

ご参加、ご視聴いただきました皆さまにとって本会が有意義でありますことを期待します。

一日も早くCOVID-19感染が収束することを念じ、ご挨拶とさせていただきます。