学術集会長挨拶

平成19年の「がん対策基本法」施行後、都道府県ごとのがん対策推進計画の策定、地域がん診療連携病院の要件強化、がんプロフェッショナル養成プランによる専門家の人材育成など、国民のニーズに応えるべく様々な分野で活発な動きが見られるようになりました。しかし、がん対策推進などにおいて、行政や施設・地域間などの連携が十分にとれているとは言い難く、様々な情報が臨床現場や患者さんにはなかなか届かない、あるいは届くには時間がかかりすぎるなどの現状も散見されます。限られた財政と人的資源を有効に活用するためには、行政と地域・医療機関、教育と臨床、患者・家族と医療職、地域社会と住民が目線を合わせ連携・協働していくシステム作りが重要な課題だと考えます。

本大会では、このような背景に鑑み、がん看護における新たなつながりの構築に向けた 再考と討議の場となることを期待して、沖縄独特の「ゆい=結ぶ・つなぐ・助けあう」の言葉をキーワードに、メインテーマを「ゆい(結い)を深めるがん看護」と致しました。

特別講演では、「沖縄の民族宗教とその担い手たち」のテーマで、文化人類学的視点からみた沖縄の精神風土について、沖縄国際大学総合文化学部教授 稲福みき子先生にご講演を頂きます。シンポジウムでは、「沖縄の家族・地域に見るゆいの心」と題して、がん患者や家族を支援するコミュニテイにおける絆などの視点より、4人のシンポジストにご登壇頂く予定です。また、パネルディスカッションでは、「つながりを深めるためのシステムの構築」を目指した具体的な取り組みとその方策・課題について、各分野からの専門家にご発言頂くことを企画致しております。さらに教育講演は、「リンパ浮腫のケア」「がん患者の栄養管理」「がん体験者の語りを結ぶ」「倦怠感のケアとアセスメント」など、がん看護実践には欠かすことのできないテーマを選定しておりますので、有益な情報共有の機会となることを期待しております。

学術集会が開催される2月の沖縄は、全国一早い桜(緋寒桜)の開花が見られる素敵な季節です。活発な研究発表や討論・がん看護のネットワークづくりの合間に、暖かい沖縄での文化風土・ゆいの心に触れ、しばし日常を忘れて癒されるひとときも体験できれば幸いに存じます。

多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第23回日本がん看護学会学術集会
学術集会長
 中森 えり
地方独立行政法人那覇市立病院 副院長兼看護部長

日本がん看護学会 ロゴ

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