アトピー性皮膚炎は、とてもかゆい湿疹が皮膚に起こる病気です。目のまわり、耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなど屈曲しているところによくできます。かゆいためにかき壊しが続くと、急速に全身に発疹が拡大し、しばしば重症化します。アトピー性皮膚炎という病名なので、いっけんアレルギーがとても関与しているように考えられがちですが、花粉症や食物アレルギーとは異なり、何かにアレルギーがあるから発症するという病気ではありません。皮膚の弱い体質といいますか皮膚のバリア機構が不十分な人に発症する皮膚の病気です。そのあたりは喘息と似ています。ですから、バリアを補完するためのスキンケア、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬やタクロリムス外用薬、かゆみを軽減させる抗ヒスタミン薬内服、かゆみを助長させるような増悪因子に対する環境整備・対策が治療の基本となります。幼小児の12%程度と頻度の高い疾患ですが、患者さんの80%は軽症、15%が中等症、5%が重症・最重症に分布します。80%は5歳までに自然軽快しますが、軽快しないで持続しながら悪化するタイプ、いったん軽快しても思春期頃に再発重症化するタイプなど経過には個人差があります。この講演では、患者さんやご家族が心配されている「治療薬に対する不安」にできるだけお答えできるように、治療の仕方・考え方を分かりやすく解説したいと思っています。